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幻の…

幻の原稿が語る・・・

               岐阜市夢プロジェクト企画運営委員長(団長) 川島 敏美

 岐阜市夢プロジェクトでは、若者が将来「夢と志を持って生きる」ために、どんな研修にすればいいのか、今までの実績をベースに9年間積み上げて参りました。その上で、最も重要な点は、自ら学び、自ら考え、自分で判断し、主体的に活動できる場を、どう意図的に位置づけるかです。海外の異国の地で、こうした力をつけるには、具体的にどうすればいいのか?いつも悩むところです。

 今回のタイ研修で特に大切にした点は、生徒の安全対策は勿論ですが、「いかにその国の人と、質の高いふれあいの場を多く持てるか」という点です。生徒には毎年、「人生 邂逅し・・・」という、亀井勝一郎の言葉を話しています。人生における「出会い」は、自らの生きる糧となると共に、無限に広がる力を与えてくれます。

 9月下旬になって、派遣生の名和由佳子さんから「青山中学校では時間が十分にとれないので、帰国報告会は昼の放送で対談形式で数分間行うことになりました。準備していた原稿とプレゼン資料が必要なくなりました。」と、少し寂しそうな声で電話がありました。

 学校の都合で仕方ないことですが、どうしても読んでみたくて、原稿を送ってもらいました。そこには、タイ研修のポイントや感動場面と要点が、きちんと整理されていて素晴らしい内容でした。夢inタイランドで企画した意図や願いを十分に汲み取ったこの原稿は、事業を理解する大きな手助けになると思いました。原稿をゴミ箱に入れるのが忍びなくて、その「幻の原稿」を、ここで紹介したいと思います。

(1) 夢プロジェクトについて

 私は、8月18日から25日までの8日間、平成29年度岐阜市夢プロジェクト事業「夢inタイランド」に参加しました。今年で9年目となるこの事業は、タイの人々とのふれあいや相互交流、日本と異なる大自然や生活習慣・文化などの見聞を通して、タイ王国の国・人についての理解を深め、国際感覚を磨き、自らの将来に夢や志をもって生きようとする姿勢を育てる、という趣旨で行われています。

 岐阜市の16人の仲間が、タイ王国について学んだり、日本にいるタイ人と交流したり、タイ王国を訪れて様々な人と交流する研修内容です。本年度は「幸せ」をテーマに、前半はタイ北部の方々との交流し、後半は都市部の方々との交流を行ってきました。

(2) 研修の特徴(事前学習などについて)

 この研修は、すべての活動を、16人の仲間が自分たち自身で行うというところに特長があります。タイ王国を訪れた8日間は勿論のこと、派遣までに4回、派遣後にも3回の研修があります。簡単なタイ語の挨拶や、現地の状況について学習するだけでなく、仲間と協力して名古屋の総領事館を訪問したり、「私にマイクを」の発表資料を作ったり、特技の発表をしたり、岐阜市在住でタイの教育について先進的な活動を行っている方の講話を聴いたりと、普段経験することのないようなことを、たくさん経験させていただきました。派遣中は、飛行機やホテルのチェックインから人々との交流まで、すべて自分自身で行います。だから自分で行動しないと何も前に進みません。困ったときは仲間同士で考えます。つたない英語での活動はものすごく不安で、苦労や失敗もたくさんありましたが、自分たちでやり切ったという充実感・達成感は、言葉では言い表すことのできないほど大きな自信になりました。

(3) さくら寮生との交流

 これは、「さくら寮」で生活している子たちとの交流の様子です。タイ北部には、多くの少数民族の人々が住んでいます。しかし、それぞれの村には学校がなくて教育が受けられません。そんな状況を何とかしようと日本の、しかも岐阜市に住んでおられる三輪隆さんが中心となられて活動を立ち上げられたのが、この「さくら寮」です。私はそこで寮生のニチャーと友達になりました。言葉はうまく通じなくても、思いは伝えることができる…。と実感した、私の最高の思い出の一つです。

(4) 象乗り体験

 タイと言えば像です。象に乗りました。象は思っていたよりもずっと大きくてびっくり。まるでジェットコースターに乗っているようなスリルがあります。そして、とても怖かったけど蛇も首に巻きました。普段の私なら絶対しない体験だけど、先生の「体験しなければ分からないことがある。ここでしかできないことに自ら挑戦する研修にしてほしい。」との言葉に後押しされ、勇気を出して挑戦しました。へびは、想像していたよりも重く、内臓が動いている様子が伝わり、今まで感じたことのない不思議な感覚でした。

(5) ラフ族との交流

 私が研修前一番恐れていたのが、このラフ族の村での民泊です。虫がたくさんいること、トイレが日本と違うこと、高床式の家の下には豚や鶏がいること…。事前学習をすればするほど、怖くて怖くて仕方ありませんでした。バスも通れない舗装もしていない道を、四駆トラックに乗って訪れました。私たちの生活と180度違う、自然と向き合って自然の中で過ごす村での生活は、「本当の幸せとは何か!」を深く考える機会になりました。

 私はタイ語が話せない、ラフ族の人は日本語も英語も話せない、言葉は絶対通じていないはずなのに、私は確かに会話をして相手の気持ちや伝えたいことが分かりました。ジャトブー村の広場では、村の人たちが、私たちが歌う「翼をください」を心を込めて聞いてくださいました。私はあの夜、静寂の村の広場で仲間と一緒に、子供たちと手を繋いで歌った時、心が震えるような感動を味わいました。恐れていたその村に、しびれるような大きな感動が待っていたのです。

(6) 黄金の三角地帯

 日本に住んでいるとありえませんが、タイはメコン川を越えればミャンマーやラオスになります。私たちは、メーサイという町から国境を越えてミャンマーに入りました。この地域は、かつては貧しい地域であり、アヘンの栽培・密造などが行われていましたが、現在は生活水準も上がりタイ有数の観光地となりました。

(7) ホームステイ

 私は、大学で建築学を教えているジラファン先生の家で、生まれて初めてのホームステイをしました。6月から、事前に翻訳アプリを用いながらメールでやり取りをし、少しずつ親しくなっていったまではよかったのですが、当日はアプリを持っていけません。どうコミュニケーションすればいいかと、とても不安でした。しかしジラファン先生は、「ボディランゲージがあるから、大丈夫。心配しないで!」と言ってくださいました。出発前には、「君を迎えることが、私たち家族の喜びです。」と。また、私のことを「二人目の娘」だと言ってくださいました。私は、ホームステイを通して優しさに包まれる幸せを感じました。

(8) ノンタブリー校

 バンコク北部にある、ノンタブリー校を訪問しました。私たちが交流したのは、日本語を学んでいる生徒たちです。授業はもちろん、漫画やゲームを通しても日本語を学んでいるそうです。私たちは校庭にマンゴーの木を植えました。この木が大きくなって、マンゴーが実るようになったら、また夢プロの仲間とともにタイを訪れると約束しました。一日かけて、生徒たちと交流し、親密な関係ができて、帰国後もFB等で親しく交信が続いています。

(9) タイ日本大使館

 大使館では、一等書記官の小崎さんの話を伺いました。大使館はタイに住む日本人の保護や、日本とタイの協力の推進、そして国際社会での協力が進むように、縁の下の力持ちとして様々な仕事をされていることを学びました。小崎さんは、日本以外の国が平和で豊かになることが、日本の平和や豊かさにつながると話してくださいました。私は世界中の人々が、平和で豊かに暮らせるよう、世界中の人と交流していきたいという気持ちが強くなりました。私の将来の夢は、この大使館訪問で確かなものになった気がします。

(10) 帰国~帰国報告会について

 このように、8日間はあっという間に過ぎてしまいました。本当に夢のようです。帰国し名鉄岐阜駅に着いた時、今までの夢プロジェクトの先輩方が、遅い時間にも関わらず私たちを出迎えてくださいました。出発前にも、たくさんの経験談を話してくださったり、出発式に激励に来てくださったりと、機会あるごとに私たちを助けてくださいました。この研修は、自分たちの力や思いだけでなく、学校の先生方、友達、先輩、家族…など、たくさんの人々の協力のおかげで成り立っているのだと痛感しました。

 この貴重でかけがえのない経験を、これからの自分の将来に生かし、充実した毎日を送っていきたいと思います。「コープクン カー」ありがとうございました。


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